徒然草

■第十五段

いづくにもあれ、しばし旅立ちたるこそ、目さむる心地ここちすれ。

そのわたり、ここかしこ見ありき、ゐなかびたる所、山里などは、いと目慣れぬことのみぞ多かる。都へ便り求めて文やる、「そのこと、かのこと、便宜びんぎに忘るな」など言ひやるこそをかしけれ。

さやうの所にてこそ、よろづに心づかひせらるれ。持てる調度てうどまで、よきはよく、のうある人、かたちよき人も、常よりはをかしとこそ見ゆれ。

寺・やしろなどに忍びてこもりたるもをかし。












松田史生氏が作成したテキストファイルを、岡島昭浩氏が手を加え、さらに江口聡氏がHTML化したファイルを以下のように変更しました。

変更箇所
  ルビ付きHTMLファイルに変換
  ルビをカタカナからひらがなに変更
  行間処理(行間180%)
  段落処理(形式段落ごとに<P>タグ追加、段落冒頭の一字下げを一行下げに変更)
変更作業:里実福太朗
変更終了:平成13年10月