徒然草
 

■第二百三十段

五条内裏ごでうのだいりには、妖物ばけものありけり。藤大納言殿語とうのだいなごんどのられ侍りしは、殿上人てんじやうびとども、黒戸くろどにて碁を打ちけるに、御簾みすを掲げて見るものあり。「誰そ」と見向きたれば、狐、人のやうについゐて、さしのぞきたるを、「あれ狐よ」とどよまれて、まどひ逃げにけり。

未練みれんの狐、化け損じけるにこそ。










松田史生氏が作成したテキストファイルを、岡島昭浩氏が手を加え、さらに江口聡氏がHTML化したファイルを以下のように変更しました。

変更箇所
  ルビ付きHTMLファイルに変換
  ルビをカタカナからひらがなに変更
  行間処理(行間180%)
  段落処理(形式段落ごとに<P>タグ追加、段落冒頭の一字下げを一行下げに変更)
変更作業:里実福太朗
変更終了:平成13年10月