徒然草
 

■第二百四十三段

つになりし年、父に問ひて云はく、「仏ほとけ如何いかなるものにか候ふらん」と云ふ。父が云はく、「仏には、人のりたるなり」と。また問ふ、「人は何として仏には成り候ふやらん」と。父また、「仏のをしへによりて成るなり」と答ふ。また問ふ、「教へ候ひける仏をば、何が教へ候ひける」と。また答ふ、「それもまた、先の仏の教によりて成り給ふなり」と。また問ふ、「その教へ始め候ひける、第一の仏は、如何なる仏にか候ひける」と云ふ時、父、「空よりや降りけん。土よりやきけん」と言ひて笑ふ。「問ひ詰められて、え答へずなり侍りつ」と、諸人しよにんかたりてきようじき。










松田史生氏が作成したテキストファイルを、岡島昭浩氏が手を加え、さらに江口聡氏がHTML化したファイルを以下のように変更しました。

変更箇所
  ルビ付きHTMLファイルに変換
  ルビをカタカナからひらがなに変更
  行間処理(行間180%)
  段落処理(形式段落ごとに<P>タグ追加、段落冒頭の一字下げを一行下げに変更)
変更作業:里実福太朗
変更終了:平成13年10月